ひっかかったのよ。
彼女はそう言っていた。
彼女は難病と共生しながら生活を送っている。車いすの生活ながら、他者の手も借りながらひとり暮らしをしている。
よく話をする間柄になって、私と彼女の間にそれなりの信頼関係もできた。
「あのね、私は、この病気は治らないことも知っているし、自分でできることや、トイレに行くことだって、できることは自分でしているのよ。」
確かにその通り。彼女には「依存」や「甘え」という言葉は似合わない。
「でもね、友人に言われたの。
『世の中には、あなた以上に難病と闘う人がいるんだから、ひとりでできることはもっとひとりでしなさいよ』とね。」
本人いわく「私はこれまでもひとりでできることはひとりでしてきたし、なにを今さらそんなこと言われないといけないの、と思ったわ」静かな怒りだった。
本人はクレーマーでもなければ、執念深い人間でもない。ただ、淡々と自分の人生を歩んでいるだけだ。
「だから、その言葉が心にひっかかり、私はその友人とは距離を置くようにしたわ」と、本人は穏やかに締めくくった。
人生の先輩のお言葉をかみしめました。